命のバトン

まだ小さな君は、ひいおばあちゃんの手の温もりも、
そのシワシワと柔らかい感覚も
きっと覚えてはいないだろう
けれど、あなたが受け継いだのは、その確かな命のバトンなのだ

初めて胎児の心拍を見たときに
生命という現象に、全身で衝撃を受けた
小さな「体」ともまだ言えないような存在は
その全身で鼓動していた
命は確かにそこにある、ただ一つの力強い存在であった
「始まり」まさにそのもの

そして、強烈に思ったのだ

私の中にある小さな命は、私が繋いでいるものでは無くて
何万人もの、祖先からから繋がれた命の糸
顔も名前もわからない、遥か彼方のあの人の
手から手へ奇跡の様に繋がれた、細いけど確かな糸
その先が、私に繋がり私の中の命へと、いま受け継がれようとしている
いいとか悪いとか、だれとか、何者とかでは無くただ鼓動する1つの存在として

当たり前の奇跡を
どうにかして残したかった
忘れてしまいそうなこの感覚を
伝えたかった

何のために?

軌跡を手にした全ての人のために
そしてその奇跡の証として生まれてくる
一つの純粋な命のために

あなたが、あなたであることは
こんなにも途方も無いことなのだと

きっと言葉だけでは届かない
君もまた、いつかまた、紡いで行くのだろうか
この命のバトンを