雨に濡れた花

Spring step Magazine 掲載 フォトエッセイ

雨上がりの朝
いつもより少しだけ早起きをした
あたりはまだ薄暗く、白い霧がかすかに残っている

人の気配もまばらな朝の公園
季節の変わり目を告げる雨が
景色を濡らした跡がある


風に吹かれて、地面に倒れこみ
雨に濡れ、その色の深みを増す

何故こんなにも心惹かれるのだろうか
晴れた日に上を向いて咲く花よりも
倒れてもなお、淡く光るその花たちに

なんて薄い花びら
光に透けて
雨に打たれて

夜の闇の面影は
その美しい輪郭をより一層引き立てている
葉脈の一つ一つが
じんわりと浮かび上がる

立ち止まり
息を吐く
じ、、、と
ただ見つめるその一瞬
心と体を一本の細い糸が通るようだ

小さな世界に、心奪われる
目線も心も、すっとひとつに絞られていく
ゆらゆらと、揺らぐ空気を目で追うことができるような
そんな気持ちにさえなる

空気とか 時間とか 思いとか
目に見えないものを
写し取って切り取って 
永遠にその色を残す

立ち止まり
心を止めてみる
その小さな世界に
心を通わせてみる
まるでおとぎ話のように広がる
小さくも深いその世界に