かみぞえ 京都

唐紙店「かみ添」を訪ねて

白い和紙に白 を刷ると光のと影が生まれる。陰影の中の「白」の世界。

日本家屋を生かした小さな店舗には、そっと足を踏み入れたくなる静かな空気が流れています。
飾られている木版画の額縁は一見何もないようにも見えますが、見る場所を変えるとほんのりと文様が浮かび上がります。光の加減で浮き出す微かに文様が浮き出すのです。白に白が刷られた小さなハガキや便箋たちも、手に取ると優しい紙の質感がします。

店主の嘉戸浩さんによると、白地に白を摺るのは、昔からの技法で、決して珍しくはないそうです。
京都の老舗で唐紙造りを5年間修業した浩 さんは「白」を扱う面白さににこだわり続けています。
季節によっても、朝と夜でも、「白」の中に広がる表情はその時によって違う陰影の世界。
もともと紙が持っている素材感に惹かれ、その素材のよさそのものを伝えられたらと語ってくださいました。
店舗の上に構えたアトリエは、丁寧に整えられた最低限の道具たちが並んでいます。
北窓からの優しい光が、刷りたての和紙の文様を浮き立たせていました。

代々続く工房と異なり、受け継がれた版木なんてありませんでした。だからこそ「かみ添え」ではどの国にもある普遍的な水玉と線を使おう。と決めこれまで歩んできました。と、シンプルな文様の秘密を教えてくださいました。
水玉模様を眺めていると、確かにいろいろなものに見えてきます。雪なのか、雨なのか、模様なのか 無限に広がる世界が心地よく、うっすらと光が差す日本家屋の奥に飾られた唐紙たちは、少しづつわずかに表情を変え、控えめなのにどこまでも奥深く、見ていて飽きることがありません。